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むらきむら さんプロフィール
映画が好き、映画より本が好き、本より音楽が好き。

高校、大学時代に大好きだったルースターズのボックス・セットに驚いている今日この頃。こんなの買えません。でも欲しいです(全部アナログの世代ですから)。



■過去記事一覧


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『ぼくのプレミアライフ』DVDジャケット

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『ぼくのプレミアライフ』
CDジャケット(輸入盤)



●コリン・ファース主演の『ぼくのプレミアライフ』のDVDが発売された

 先月(10月20日)にコリン・ファース主演の『ぼくのプレミアライフ』がDVD化された。コリン・ファースの名前は『ブリジッド・ジョーンズの日記』、『ラブ・アクチュアリー』、『真珠の耳飾の少女』でおなじみになりつつあるし、これらの作品を観て、彼のファンになった方も多いはず。そういったファンには、日本未公開なんだけど、ぜひ、この作品も手に取って欲しいと思う。彼の魅力が溢れているし、何より内容がいいのだ。でも、この作品は女性より男性の方が思い入れが強くなるのではという気もする。彼女も好きだけど、彼女以上に命を懸けなければならないものがあるというそんな内容だからだ。その命を懸けるものは、国際的な使命や仕事ではない。サッカーなのだ。それも自分がプレイするのではなく、単なるいちファン。熱狂的なサポーター、単なるサッカー馬鹿なのだからね。

●原作は『ハイ・フィデリティ』のニック・ホーンビィ

 で、この『ぼくのプレミアライフ』の原作を書いたのが、イギリス人の作家ニック・ホーンビィ。映画ファンには『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』の原作者といえば通りがいいのだろうか。彼は作家活動だけでなく、アンソロジー的な内容の書物を編纂するほどの正に現代のイギリスを代表する作家のひとりなんだけど、彼の名前を一躍有名にしたのがこのデビュー作である『ぼくのプレミアライフ』だった(日本では『ハイ・フィデリティ』が先に出版されている)。英国では発売と同時にベストセラーとなり、ミリオンセラーを記録。WHスポーツ・ブック賞という名誉ある賞まで獲得したこの作品、読んでもらえば分かるが、イギリスのプレミアリーグに所属するアーセナル(稲本が所属もしていたチームで、名古屋グランパスエイトで監督もしていたベンゲル監督が率いるチーム)の熱狂的なサポーターの日記的な本。ホーンビィ自身の自伝的なもので、はまれば、面白いのだが、サッカーに興味がないときついかなという内容でもある。ただ、映画はそういったマニアックな部分を端折ることで、普遍的な駄目男のラブ・ストーリーに仕上げている。最後なんてちょっと感動してしまう。で、よくよく考えてみると、この内容は『ハイ・フィデリティ』が描いているものと大差ないんだよね。どちらも最も大切にすべきものには気づかない駄目男という点でね。だから、この作品は男受けをするはず。 『ハイ・フィデリティ』が好きなら必見の作品です

●音楽マニアのニック・ホーンビィ

 この『ぼくのプレミアライフ』はホーンビィにとっては初めての映画化作品で、並々ならぬ思い入れもあったんだろう、自らが脚本を書き下ろした唯一の作品で、出演までしている。出演者のクレジットはないはずだが、少年サッカーのコーチ役かなんかで出演しているのが、確かホーンビィだったはず(間違えていたら申し訳ない)。そして、ホーンビィの映画で忘れてはいけないのが音楽の使い方のうまさ。中古レコード屋の店主をジョン・キューザックが演じた『ハイ・フィデリティ』のヴァラエティーに富んだサントラはもちろん(サントラとは関係ないが、ジョン・キューザックはもちろん、店員のジャック・ブラックもいいのよ。泣かせるし。)、ホーンビィ自身がプロデューサーとしてかかわっている『アバウト・ア・ボーイ』ではバッドリー・ドローン・ボーイを全編に起用している(これがブライアン・ウイルソンかポール・マッカートニーかという音でまた良いのよ)。上記の2作品は劇場公開もされ、輸入盤屋でも大々的に展開、日本盤も発売されているのでサントラをもっている方も多いと思う。で、この『ぼくのプレミアライフ』のサウンドトラックも相当にいいんだよね。

●ホーンビィによる『ぼくのプレミアライフ』の思い入れ一杯の曲選び

 先にも書いたように『アバウト・ア・ボーイ』ではバッドリー・ドローン・ボーイ、『ハイ・フィデリティ』ではジョン・キューザック自身も映画内に使用する音楽の選曲に絡んでいるのだが(それ程マニアックということね)、この『ぼくのプレミアライフ』にはニック・ホーンビィ自身が選曲にも絡んでいる。『ハイ・フィデリティ』では舞台がロンドンからシカゴに移されたため、多少、アメリカよりの選曲になった部分もあるのだが、この『ぼくのプレミアライフ』はイギリス的な選曲に彩られている。ホーンビィ自身が選曲について語っている部分を読むとその思い入れが一層伝わってくる。ちょっと書き抜いてみよう。
 “音楽は僕にとっても重大なものだった。この作品の脚本の前に、実はサウンドトラックのテープがあったんだ。僕は監督のデヴィッドに片面は1968年から1972年、もう片面は1988年から1989年にかけての曲を収めたコンピレーションテープを作って、渡していたんだ。その中でも、ザ・フーの「Baba O'Riley」とリサ・スタンスフィールドの「All Around The World」は完成した映画の中で鍵になる曲だと考えていたし、いくつもの曲がカー・ラジオやパブのジュークボックスから流れていたよ。最終的にはプロデューサーのアマンダと監督のデヴィッドと僕との綿密なリサーチとディスカッションを重ねた末にセレクトしたんだ。アマンダの車の中でバーズやティム・ハーディンなんかの音楽を聴いているときなんか、あの夏の思い出がよみがえってくるようだったね。”
 いい話だと思いません。僕なんかはホーンビィが車の中で、きっとチープなカーステレオで、自分たちにとっての思い出の曲をひっかえとっかえしながら聞いている様子を想像しただけで、嬉しくなっちゃうんだけどね。この気持ち分かると思うんだけど。
 で、『ぼくのプレミアライフ』が実は熱狂的なアーセナル馬鹿の駄目男の物語でありながらも、その背景のひとつとして、音楽が重要な役割をしているのは分かってもらえるんじゃないかと思う。『ハイ・フィデリティ』ではジョン・キューザックも自分の音楽の趣味をマニアックに押し出してきているから、コリン・ファースもきっと自分の趣味を押し出しているんじゃないかなと思ったりもするのだが、コリン・ファースはあまりにもマニアックな、ま、ちょっと変わった音楽の趣味を持っていたのだという。要するにホーンビィなんかとは共有できないようなダサいポップ・ミュージックのマニアだったということ。もちろん、彼の意見は流されたみたいだけどね。
 カーステレオで思い出を共有しながら、何度となくディスカッションを重ね、まな板の上に選び出された曲だが全てが使用されることはなかった。いや、使用できなかったといった方がいいだろう。例えば、ニール・ヤングの名曲「Only Love Can Break Your heart」は権利の関係で駄目。そういう結果もあれば、これも駄目だと思っていたプリテンダーズの曲はリーダーのクリッシー・ハインドがホーンビィの書いた「ハイ・フィデリティ」の大ファンであったことから、話がうまくまとまったという。しかも最終的には既存の曲ではなく、この映画のために「Going Back」(ゴフィン&キングの名曲のカバー)を歌ってもらうというおまけまでつけてしまった(ホーンビィはそんな有名人が自分の本を読んでいるんだから、作家家業はたまらないと言っている)。ちなみに元ロック・ジャーナリストでもあるクリッシー・ハインドはこの作品のラフを観て、感動したという。

●単なる曲の寄せ集めではない『ぼくのプレミアライフ』のサウンドトラック

 サウンドトラックは曲と曲の間に映画の中のモノローグを挿入しながら、すごくいい感じで進行していく。単なる曲の寄せ集めではなく、ひとつのアルバムとしてきちんと成立している本当にいいアルバムである。僕も何度となく繰り返し聞いている。入っているアーティストは、ダリの写真のようなジャケットが印象的だったラーズの名曲「There She Gose」、酔いどれシェーン(今、何してるんだろうか)率いる最強バンド ポーグス、このバンドはもう一度どこかで再発見されるべきだなと思うファイン・ヤング・カンニバルズ、プリテンダーズの新録「Going Back」、アイルランドの大御所ヴァン・モリソン、そしてホーンビィが鍵になる曲としたザ・フーの「Baba O'Riley」とリサ・スタンスフィールドの「All Around The World」など。映画のためのオリジナル音楽はホーンビィの友人であり、80年代後半にバイブルというバンドを率いていたニール・マッコールとブー・ヒュワディーンが担当。特にブー・ヒュワディーンはエディー・リーダーやKD.ラングなどソングライターとしても高い評価を獲得している。何回か来日もしています。  

●個人的なヴァン・モリソンの思い出話
 映画もこのサウンドトラックでも印象的な曲はオープニングにかかるラーズの「There She Gose」なんだけど、個人的に最も印象的なのはヴァン・モリソンだった。今でもアルバムが出れば、必ず購入する本当に大好きなアーティストなんだけど、彼が自分の曲をサウンドトラックに使用させるのって、結構稀なことだったはず。人生にロックは欠かせないというヴィム・ヴェンダースが自分の映画ののために曲を書いてくれと頼んだけど「そんなこと出来るか(と言ったかは知らないが)」と断ったアーティストでもあるからね。さすが、同じアイルランドの誇りでもボノとは違う。気骨がある(というか、偏屈?)。飛行機が嫌いで、日本も嫌いという噂のあるヴァン・モリソンだから、日本でのライブはほとんど不可能(でもジョアン・ジルベルトの例もあるしね)なんだけど、僕は1度だけ見たことがある。死ぬまでに1度は生で体験したいライブというのは音楽好きだからいくつもあって、実際に体験するとどれも気持ちだけで胸が一杯、わけも分からず感動してしまうんだけど、ヴァン・モリソンも例外ではなかった。明日、30歳になるという日、20代最後の1日に夢にまで見たヴァン・モリソンなのだから尚更だった。正直「これはある種の運命だな」と勝手に思い込んだ。場所はNY、確かイースト・リヴァーに浮かぶ島で開催された“アイルランド・フェスティバル”的な音楽ライブ。まだ、今みたいにブレイクする前のレイドバックしたR&Rだったウィルコ、10000マニアックスを解散し、ソロになったナタリー・マーチャント、テントで歌うリチャード・トンプソンやスザンヌ・ヴェガなどを堪能しながら、ビールを飲み見続けたライブの大トリがヴァン・モリソン。登場した姿は、白いスーツに、白いハット、サングラスの小太りなペンギンマンみたいだったけど、一声でノックアウト。ジョージ・フェーム、ピー・ウィー・エリスという最高のバックを率いたヴァンのライブは正に“ヴァン・ザ・マン”ともいうべきソウル・ショーのスタイル。アンコールも「もっとヴァンが聞きたいか」、「イエー!ワン・モア」の掛け声だからね。最高でした。会場にたくさんいたアイルランド系の人たちにとってもやはりヴァンは別格だったみたい。アイルランドに住んでいたという友人に聞いた話だが、かの地ではやはり別格も別格らしいですね。あの曲も歌ってくれたという王道のような一生忘れることのないライブだったんだけど、終わった後に思ったことは、もっと見たい、もっと聞きたいだった。

●で、『ぼくのプレミアライフ』をぜひ、観て欲しい
 コリン・ファースのファンもラブコメ好きも音楽ファンも駄目男も楽しめる『ぼくのプレミアライフ』だが、発売までの道のりは長かった。有志のファンによる劇場公開(日本版発売)運動があり、彼らが動いている過程で僕はこの作品に出会い、そうした運動とは少し外れたところで、小さな歯車として作品の発売にかかわった。だから、この作品への思い入れは強い。でも、色んな未公開作品を見た中でも作品の面白さが抜けていたことも確かで、だからこそ、小さな歯車として作品にかかわることになったのだ。つまらなかったら、間違いなくかかわることはなかったからね。実際の発売までは本当に長い月日が費やされたけれど、コリン・ファースの知名度も上がってきたし、本当にいいタイミングでの発売だと思っているし、すごく嬉しい。そして、この作品は劇場未公開だからこそ、多くの人に観て欲しいと思っている。映画を観て、気に入ったら、ついでにサントラも探してもらえればと思う(『ぼくのプレミアライフ』に関してはこちらのサイトを御覧ください
(http://columbia.jp/dvd/titles/fever/ )。

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