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■電気羊プロフィール
アニメーター、編集者を経て現在はフリーライター兼翻訳者のハシクレをしている。好きな映画は「ブレードランナー」、好きな役者はコリン・ファースと嵐寛寿郎。だんなについて、目下カリフォルニア州サンタクルーズに滞在中。せっかくなんで、コミュニティ・カレッジに通いつつ、映画三昧している。この度3年越しの夢が叶い、コリン・ファース主演作「フィーバー・ピッチ」で字幕翻訳家デビュー! 趣味はスキューバダイビングとビリヤード(どっちも超ヘタ)。日本から連れてきた耳垂れウサギを飼っている。


■過去記事一覧



写真01
「Breakfast on Pluto」
ポスター

写真02
「The Squid and Whale」ポスター

カリフォルニアはサンタクルーズから、毎月最新ホヤホヤの映画情報をお届けする「もぎたて映画通信」。第20回は、アイルランド、ブルックリン、ニューオーリンズ&チェコのリゾート地と、バラエティに富む舞台の映画を3作ご紹介!

☆Breakfast on Pluto

ニール・ジョーダン監督の最新作です。この監督のファンなので、チャーミングでファンタスティックなジョーダン節全開の予告編を見てから、ずっと公開を楽しみにしていました(^_^)。

『28日後…』から強烈な個性を放っていたキリアン・マーフィが、細身の体を生かして、女装癖のある若者を演じています。

パトリックはアイルランドの町の教会に捨てられていた孤児。バーのおかみさんに育てられ、子どもの頃から夢想癖と女装癖のあった彼は、成長すると町を飛び出してロンドンに向かいます。ミッツィ・ゲイナーそっくりといわれる、自分を捨てた母親を捜しに…。

冒頭、町を自由に飛び回っていた二羽の小鳥が教会の庭に降りて、字幕で会話を始めた時から、もうジョーダン・マジックにかけられてしまいます。マジックといえば、ジョーダン御用達俳優スティーヴン・レア(『クライング・ゲーム』)が、ロンドンでパトリックを拾う三流マジシャン(「Sight&Sound」誌に、"映画史上最も哀れっぽいマジシャン"と形容されていた。でもこのロマンチックで純情そうなキャラクターがいいのです)を演じていて、ふたりの出会いの場面が、これまた素敵。

このシーンの前、パトリックは変態男に危うく殺されそうになるんですが、変態男の役を、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーが演じています!はまりすぎてて、いや?ん!あと、『ハリー・ポッター』で"マッド・アイを演じたこわもて顔のブレンダン・グリーソンが、鳥の着ぐるみを着た姿で登場して、かわいらしく腰を振りながらステップを踏みます(^_^)。それから、この映画のリアム・ニーソン、すごくいいです。クワイ・ガン・ジン役以来、若者を導く聖人君子風な役ばかり振られてきた彼をこんな使い方ができるのも、ジョーダン監督ならでは?

ロンドン目指してヒッチハイクをしていたパトリックを、巡業中のロックミュージシャンのヴァンが拾います。バンドのリーダーを演じるギャヴィン・フライディは、本当にミュージシャンで、『イン・アメリカ』などに曲を提供しているそうです。このリーダーが意外にもパトリックにメロメロになってしまって、それまで、むさ苦しいカントリーロック路線だったバンドが、突然メイクと派手な衣装でキメたグラムロック風(舞台は70年代)に変身して、メンバーがトホホってなっちゃうところがおかしいです。

原作&脚本は、『ブッチャー・ボーイ』のパトリック・マッケーブ。原作本は、ブッカー賞候補になったそうです。『ブッチャー・ボーイ』は日本で公開されなかったけど、ジョーダン監督作の中でも1,2を争う出来だと思います。両作に共通しているのは、絶対に自分を哀れまない主人公。

去年の末から今年にかけて、『ブロークバック・マウンテン』や『TransAmerica』、『カポーティ』など、ゲイや性同一性障害を扱った映画がどわっと出て、ちょっとそれらの影に隠れてしまったような感がありますが、この作品のチャーミングさは捨てがたいです。

マーフィー扮するパトリックがすごくよくて、女装もなかなか堂に入っていて、彼を見ているだけで楽しいです。ただ、なよなよした作り声と、周りがどんな状況でも、ニコニコしているパトリックに、いらつく人もいるようです(評論家のロジャー・エバートは、それはパトリックが悲惨な環境で身を守るための彼の処世術なんだよ、と指摘してました)。警察にテロリストと誤解されてボコボコにされた時、「女スパイ」になった自分が、秘密兵器の香水で、敵をブシュー、ブシューって倒しちゃう妄想シーンなんて、最高に楽しいです! パトリックを嫌うなら、『蜘蛛女のキス』のウィリアム・ハートも否定してみせろよってんだ(←誰にケンカ売ってるんでしょうね)

ジョーダン監督は、次はボルジア家の話を、ユアン・マクレガーとクリスティーナ・リッチ主演で撮りたいそうですが、資金集めに難航しているらしいです。ぜひ実現して欲しい…。

☆『イカとクジラ』The Squid and Whale

1980年代のブルックリンに住むある家族の、離婚をめぐる話。監督・脚本のノア・ボーンバッハの子ども時代の体験がもとになっているそうです。

バークマン一家は、作家の父バーナード(ジェフ・ダニエルズ)、作家デビューほやほやの妻ジョアン(ローラ・リニー)、16才のウオルトと12才のフランクの4人家族。映画が始まって早々、両親は離婚を決意し、バーナードはブルックリン郊外に家(かなりボロ)を借りることにして、子どもたちは週末ごとにふたつの家を行ったり来たりします。

ストーリーは、どちらかといえば子どもたちの目を通して語られますが、だれか一人に偏ることなく、みんなの気持ちや傷みを当分に描いています。

しいていえば、やっはり長男のウォルトが主役になるのかな。最初は父の味方をして、母を責めるのですが、敬愛していた父親だって完璧じゃないと悟ってちょっと大人になる、プレイボーイの素質大のウォルト。オープニングで、4人でダブルスのテニスをしているのですが、父親がようしゃなく母親にボールをぶつけ、得意になっている様子で、この家族のいろんなことがわかります。バーナードはゲームで不利になると口汚くののしるのですが、それに次男のフランクが影響されちゃって、テニスや卓球をしていて球をはずすと、かわいい声で、とんでもない言葉を吐いて悔しがります(^_^;)。

次男はこのほか、最初のショックの後は、長男に比べておっとりと事態を受け入れているようでいて、裏でいろいろおもしろいことをやらかします(両親は自分たちのことに夢中でスキだらけなので、まったく気がつかない)。バーナードは、自分以外は妻を含めて見下しているのがミエミエの男で、ジェフ・ダニエルズがいう通り、「一歩間違えばモンスター」なんですが、間違わないで、人間くさく演じきった彼の演技が大絶賛されています。

とにかくバーナードもジョアンも両親である前に一人の人間として常に振る舞い、子どもは二の次(でもとても愛している)。そんなふたりを責めるでなく、ユーモラスに見つめる製作者たちの目線が暖かいです。ユーモアって、他者を許すことから始まるのかもね。

脇役で、アナ・パキンやウィリアム・ボールドウィンが出ています。

☆Last Holiday

クイーン・ラティファ主演のコメディ。堅実なデパートの店員だったラティファが、余命あと数週間と宣告され、コツコツ貯めた貯金を使ってパーッと豪遊しちゃえ! というあらすじ。

予告編で、高級スパで全身ぐるぐる巻きのラティファが、トイレタイム! と言って、ぐるぐる巻きのままよちよち歩いていく姿が映るたび、場内爆笑してました(^_^)。あと、クイーン・ラティファの主演映画にジェラール・ドパルデューが顔を出しているのも意表をついていて、それだけで見にいこうかという気にさせます。

ジョージアは、ニューオーリンズの大手デパートチェーンの調理器具コーナーで、料理のデモをしている店員。家ではTVの人気料理番組「エメリル」(←アメリカで大人気のシェフ。"バーン!"が口癖。日本でも放映している?)を見ながら、料理研究に余念がない(でも自分はダイエット中なので、作った料理は隣の男の子に食べさせている)。そんな料理好きのジョージアが、豪遊先に選んだのは憧れのフランス料理シェフ、ディディエ(ドパルデュー。ディディエっていうとどうしても仏映画『ディディエ』のサッカー犬を連想してしまう(^_^))がレストランを切り盛りしているチェコの高級リゾート・ホテル「グランドホテル・プップ」(←実在)。ヘリをチャーターして雪深いホテルに降り立ち、ブティックでドレスを揃え、レストランにさっそうと乗りこむと、メニューを全部まとめて頼むのだった。豪快な振る舞いに、ホテル客たちの注目の的になるジョージア。富豪や重鎮ばかりの客の中には、ジョージアの勤め先のデパート王(ティモシー・ハットン)もいた??。

観にいくまで知らなかったのですが、監督はウェイン・ワン。脚本は、よくこれを映画化するよな、っていう程度の出来で、それをここまで面白い作品に仕上げているのは、もちろんクイーン・ラティファの魅力も大きいと思うけど、ドタバタ・コメディなのに、不思議なしっとり感をただよわせてしまう監督の手腕のおかげだと思います。

ワン監督の映画、全部観ているわけではないけれど、観るといつも不思議な気持ちになります。なんでかなー。主人公も、どんな端役も区別なく、等価値に撮っているような印象を受けるせいでしょうか。映画を観たと言うより、いろんな市井の人を撮ったポートレイト写真展に行ってきたような気になります。そんな監督の真骨頂がいかんなく発揮されるのが、大人数で囲む食卓風景。『夜明けのスローボート』、『ジョイ・ラック・クラブ』、『ウィン・ディキシーのいた夏』、それから本作、みんな印象的な宴シーンが出てくるし、しばしばラストシーンが食事風景だったりします。

この映画でのお気に入りのシークエンスは、美しいホテルのバルコニーに腰かけて飛び降りようとしているある人物を、ジョージアたちが説得しようとしていて、その様子を下から見上げている端役2人が、「あれは誰だ」とか「ぼくたちもあそこに行こうか」とかいいながら見物しているところ。

本作には、台風カトリーナでメチャメチャになる前のニューオーリンズの町並みが出てきます。ジョージアが、金持ちのご機嫌取りばかりしている知事に、「もっと庶民のこと考えなきゃダメ」みたいにいうのが、災害当時の政府の腰の重さと重なって、なんだか非常に重みを持って聞こえます。

びっくりしたのは、これがアレック・ギネスの1950年の同名映画のリメイクだということ。こんなものまで、リメイクなのかぁ。

ぢゃ、また来月(あたり)。
(Jan. 28 2006)
電気羊

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