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■インタビュー会場にて

- シナリオは物語の過程が信じられると自分自身が納得がいくまで書き直します -

 11月11日都内某所でこの12月3日に公開される韓国映画の話題作『ビッグ・スウィンドル!』の監督チェ・ドンフンの合同取材が行われた。チェ・ドンフンは劇場映画監督デビューとなったこの作品で、いきなり韓国のアカデミー賞にあたる大鐘賞映画祭 新人監督賞、脚本賞を始め、韓国国内の3つの映画祭で合計9つの賞を受賞、これにプラスして<CINE21>読者が選ぶ今年のベストムービー第1位という観客の圧倒的な支持も手にしている。この作品『ビッグ・スウィンドル!』の面白さは何かと問われれば、先の読めないストーリー展開、登場人物のキャラクターなどチェ・ドンフン監督が自ら書き上げた脚本にある。韓流ファンだけのものにしとくにはもったいない、とにかく圧倒的に面白作品なのだ。今回の取材ではやはりこの脚本(シナリオ)のことに質問が集中。チェ・ドンフン監督はユーモアも交えながら、質問の一つひとつに丁寧に回答してくれた。当日の合同取材の内容は以下の通り(なお内容、回答などは読みやすくなるように手を加えています)。

Q.作品のキャラクター設定が大変面白いと思ったのですが、どのように考えたのですか。

A.この作品にに出てくるキャラクラーは基本的には普遍的な登場人物だと思います。ですから、それぞれのキャラクターに誰か特定のモデルがいるわけではなく、役者の皆さんが元々持っているキャラクターとシナリオに出てくるそれぞれのキャラクターとを融合させて、新しい人物を作りだしました。

Q.詐欺を作品の題材にしたのはなぜですか?

A.基本的に詐欺は質の悪い犯罪だと思います。ただ、どのような犯罪にかかわっている人が面白のか、と聞いてみたら、それが詐欺師だったのです。詐欺師は“映画俳優”のようなもので、自分の役割をしっかり演じます、そういうところがいいですね。

Q.今回、2年という時間を費やしてシナリオを書かれていますが、一番難しかった点はどこでしたか。

A.最初のカーチェイスのシーンは当初、工場を爆破させる予定でしたが、いざ撮影となったときに工場の所有者にNGを出されてしまいました。そこで、今は使われていない高速道路で撮影することになりました。結果的にはとてもいいシーンが撮影できましたので、とても気に入っています。

Q.詐欺師を取材して「これを映像にしたい」と思った事があると思うのですが、(映像化が難しいなど)断念した部分はありますか。

A.詐欺師の人たちに会い、実際にあったような詐欺の内容を聞いて面白いなと思った事はあります。ただ実際の詐欺というものをリアルに映画にしてみると面白くなくなってしまうのです。なぜなら、詐欺というのはじっくりと時間をかけて行うものなので、映画の2時間という枠の中には収まらないからです。私自身は(映画のように時間が)短く、観る人が「ああ、こういう事あるだろうな」と実際の出来事として理解できるような事に興味があります。

Q.主役のパク・シニャンをはじめ、脇役にもとても個性的な役者が揃っていますが、どういう意図からそのようにしたのでしょうか。

A.たしかに主役というのはとても大事です。そして脇役の人たちもそれに負けないくらい重要なものです。脇役がサポートをしなければ、主役の演技が活きてこないと私は思っています。私は、配役を決定する際には厳しいオーディションをしますし、一言でも台詞のある役者にはきちんと挨拶をしています。そして、実際にキャストが決定したら、出来る限りその俳優たちと会い、たくさんの話をして、「この映画はどういう映画か」、「この役がどういう役なのか」をきちんと理解してもらえるように努力しています。

Q.主演のパク・シニャンを念頭において、シナリオを書かれたという話を聞きましたが、そうなのでしょうか。

A.シナリオというのは、ある程度、仮想して書いた方が面白いのです。このシナリオで最初にイメージしていたのは、柄の悪いチンピラで、口からでまかせをいって自分のペースに巻き込んでいくタイプでした。でも、外見上はそう見えないタイプは誰かなと考えていたところ、浮かんできたのがパク・シニャンでした。それまでの彼のイメージはメロドラマや誠実な役柄が多かったので、彼が詐欺師を演じると大変面白いだろうなと思ったのですね。シナリオが出来上がり、他の俳優さん達にも読んでもらったのですが、二役という難しい役柄をやりたがりませんでした。しかし、パク・シニャンはすぐやる!と連絡してくれました。本当にに彼が演じてくれてラッキーでした。

Q.パク・シニャンの特殊メイクには観ている人も驚くと思うのですが。

A.あの特殊メイクには5時間もかかり、メイク後、外を歩きまわっても誰もパク・シニャンだと気が付きませんでした。彼は自分から不細工に見えるように義歯を入れようとかアイデアを出してくれました。逆にこちらが本当にいいのかなと心配してしまうくらいでした。

Q.詐欺を通じて命を落とす人もいれば、それによって復讐を果たす人もいます。この作品では詐欺を通して否定的なメッセージと肯定的なメッセージを感じましたが、監督は詐欺を通して何を描きたかったのですか。

A.特に何かをメッセージしようと思い撮影してはいませんでした。例えば、この作品には悪党はいつか裁かれるというメッセージはありません。観た人が何かを感じ、受け取ってくれればいいと思います。あえて言えば、皆さんも気づいていないかもしれませんが、こういう人たちが自分のすぐ近くにいるかもしれませんよ、という事です。

Q.脚本の構成上苦労した点はありますか。

A.私はシナリオを書き進めていきながら、場面、場面でクエスチョンマークをつけていきます。例えば、キム先生(ペク・ユンシク)はどうして途中で兄だということがわかったのか、というクエスチョンマークに対し、その答えを色々と考え、納得のいくまで書き直すのです。その過程が信じられるまで書いていきます。ですから、脚本は30回くらいは書き直しています。

Q.書くことが難しかったシーンはありますか。

A.例えばキム先生が、チャンヒョク(パク・シニャン)から韓国銀行を狙おうと誘われるシーンは難しかったですね。あまりにも簡単に引き受けるのもなんだしなどと、納得のいくまで書き直しました。

Q.監督はあるインタビューで、この作品では韓国的なリアリティを目指したと話していましたが、それはどういうことなのでしょうか。

A.私にとって、リアリティとは「信じられること」だと思います。もちろん、それはある種の錯覚かもしれないですが。例えば、この映画を撮影するにあたり、多くの詐欺師に会いましたが、詐欺師には見えない人がほとんどでした。それは一般の人が思い描く詐欺師の姿と違い、実際の詐欺師は全くそのようには見えないということです。だから詐欺師というキャラクターをその両者、イメージと実際の折衷案で描かねばならないと思いました。また、リアリティを与えるために、家族を登場させるという方法もありますが、それは嫌だったので、詐欺師仲間の会話の中に人間らしさを見せよう、リアリティを与えようとしていきました。

Q.もし自分が詐欺師として演技することになったら、作品中のどのキャラクターがいいですか。

A.オルメですね。よくパク・シニャンが「監督はオルメが一番好きなんだよ」と撮影中にからかわれるほどでした。

Q.なぜ、悪党を主人公にしたのですか。

A.多分、元々いい人が悪党を主人公に、そうでない人がいい人を主人公とした映画を撮るのではないでしょうか?(笑)私は模範生でしたので、不良をみてどうしてこういう人がいるんだろうといつも不思議に思っていました。(笑)

Q.俳優としてのチェ・ドンフン監督に関してはどう思いますか(注:チェ・ドンフン監督は俳優としても活躍しており、この作品にも出演している)。

A.私は俳優になりたいわけではありません。ただ、カメラの前に自分が立ったときに、どんな化学反応が起こるかが楽しみなのです。

Q.監督はこのデビュー作で、韓国国内の映画祭の9冠を受賞しましたが、次回作へのプレッシャーはありますか。

A.賞を取らなければ、というプレッシャーはありません。脚本についても、例えば、夜に書いたものが次の日の昼になると納得できないということも多いんです。だから(次作も)納得のいくまで、書き直したいですね。

Q.俳優達との撮影中のエピソードなどはありますか。

A.最後の方のシーンなのですが、夜、雨の中でキム先生とチャンヒョクが闘うシーンがあります。このシーンはカットをかけるたびに、地面が凍ってしまうほどの寒さで本当に大変でした。そんな中、(年上の)ペク・ユンシクが「つらいか?つらくないか?ちょっと休みながらやるか?」とパク・シニャンに聞くんですね。おそらく自分が休みたいんですよ。そうするとパク・シニャンが「寒くて大変で死にそうです」とちゃんと答えて、休憩を取ったりしました。2人が寒さの中、スタンバイで立ち竦んでいたことなどが今でも思い出されます。

Q.監督が好きな作品は何ですか。

A.映画では『ブリット』(監督:ピーター・イエーツ/主演:スティーブ・マックイーン)です。あのカーチェイスが好きで、ヘリコプターを使って私もあのように撮影したかったのですが、お金がなかったので、どうやったらああいうショットになるかのだろうかと、ビルの上から色々と試行錯誤しながら撮影しました。また、マンガなら、あだち充の「H2」、浦沢直樹「MONSTER」などが好きです。「H2」が映画化されることを聞いたときには嬉しかったですよ(笑)。小説ですが安部公房の「他人の顔」も興味ありますね。

Q.これから映画を見る方に、この映画はどんな映画だと説明しますか。

A.ある監督が作った、おもしろいミステリー映画です。

Q.オススメのシーンはどこですか。

A.例えば、話も終盤、だんだんと色々な謎がわかってきたところで、パク・シニャンがレストランから出るときにすれちがったカップルに悪態をつくシーンは、パク・シニャンの演技もよく、ひと息で撮影したシーンです(注:ワンカットという意味か)。このシーンは個人的に気に入っています。

映画『ビッグ・スウィンドル!』は12月3日より渋谷シネ・アミューズ、新宿武蔵野館にてロードショー。その後、全国順次公開です。
作品詳細はこちらで!

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