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■電気羊プロフィール
アニメーター、編集者を経て現在はフリーライター兼翻訳者のハシクレをしている。好きな映画は「ブレードランナー」、好きな役者はコリン・ファースと嵐寛寿郎。だんなについて、目下カリフォルニア州サンタクルーズに滞在中。せっかくなんで、コミュニティ・カレッジに通いつつ、映画三昧している。この度3年越しの夢が叶い、コリン・ファース主演作「フィーバー・ピッチ」で字幕翻訳家デビュー! 趣味はスキューバダイビングとビリヤード(どっちも超ヘタ)。日本から連れてきた耳垂れウサギを飼っている。


■過去記事一覧



写真01
「ウォレスとグルミット/
野菜畑で大ピンチ!」
ポスター

写真02
「MirrorMask」ポスター

写真03
「秘密のかけら」ポスター

カリフォルニアはサンタクルーズから、毎月最新ホヤホヤの映画情報をお届けする「もぎたて映画通信」。第18回は、チャーミングなストップモーション・アニメと、コリ様(ヨン様のマネ)の新作映画が登場!

☆「ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ!」Wallace & Gromit: The Curse of the Were-Rabbit

  ティム・バートンの「コープス・ブライド」に引き続き、ストップモーション・アニメーションの傑作長編が、2ヶ月間で2本もメジャー公開されるなんて、盆と暮れが一緒に来たみたいにめでたいではないですか! ストップモーションで長編作るなんて何年も何年もかかるのに、気前が良すぎるぞ!

しかも今回は、ウサギがいっぱい出てくる! わんさか出てくる! 人々が手塩にかけて育てた野菜たちを食べる害獣として。今回ウォレスとグルミットは、害獣(=ウサギ)駆除屋さんとして、ウサギたちをどんどん捕まえます。ウォレスのウサギ専用捕獲マシン、Bun-Vac 2000(だったかな)で、ウサギ穴からどんどんウサギを吸い上げちゃう。「うぃ?!」っていいながら吸いこまれていくウサギたちが最高。マシンの中でぐるぐる回るウサギたちは、実はCGだそうです。いわれなきゃわかりませんでした。よっくみると、1、2匹、うもんと同じ垂れ耳ウサギもいます。ああ、今もこうして、映画館ではウサギたちがぐるぐる回っているのかと思うと、たまりません。今すぐ劇場へ駆けつけたくなります。

 野菜モチーフのファッションと、しなしな歩きが見物のヒロインも好きです。声は、「コープス・ブライド」とは全然違った役柄&しゃべり方の、ヘレナ・ボナム・カーター。大人の観客たちには、敵役のクオーターメイン(レイフ・ファインズ)と犬のフィリップのコンビが案外受けていました。ちょっと今回、彼らの笑うところが予想外というか、なんというか、新鮮でした。そこで笑うんだ。でもここでは笑わないんだ。そんなベタなところで笑うんだ。やっぱり下ネタがいいんだ。子どもの笑い声は、併映の短編「マダガスカルのペンギン」(題は適当)では聞こえたんですが、本編ではほとんど聞こえませんでした。でも、ひとり、チビッコがグルミットのぬいぐるみを抱いて見に来ていました(^_^)。ペンギン、楽しみましたけども、ただ、これほど洗練された最先端のCGアニメが頭に来られると、ちょっと肝心の本編がもさもさ野暮ったく見えちゃって、どっちがオマケなんだかわからない印象も受けました。もさもさを観たくて来ているのに、なんだかな。

 映画の後半は、ストップモーションの元祖、「キング・コング」オマージュになっていました。ウォレスたちの車からおもむろに「投げ縄」が出てくるところは、レイン・ハリーハウゼンと対談したこともあるニック・パークの、「恐竜グワンジ」リスペクトでしょうか。

  残念ながら、この映画には、1,2作目に感じた愛着や、センス・オブ・ワンダーは感じられませんでした。自分がこぢんまりした作風の方が好きと言うだけかもしれないけど、「ウォレスとグルミット」は、長編向きの素材じゃないという気がします。ウォレスとグルミットのふたりに、今回はなんだか違和感を覚えてしまいました。「チーズ好き」「あみもの好き」というのがただの記号になってしまっていて、家庭的で、とぼけた味わいがなくなってしまい、正直寂しかったです。だってですね、グルミットが体を張って自分の危機をふせいでくれたのに、「ヤッター」とかアメリカ人の明るいティーンエイジャーみたいに喜ぶウォレスなんて、なんか変ぢゃないですか? パートナーの心配、しないの? このシリーズは、どのキャラも基本的に内向的なのに、もう今回ウサギ含めてどなたもとっても積極的で、自信満々で、カラッとさわやか。それがやっぱり、アメリカで手放しで喜ばれている理由でしょうか。「ニューヨーク・タイムズ」紙か何かの評で、まゆの上げ下げだけで感情を表現するグルミットを、キートン以来のサイレント演技の名優! と褒めちぎってました。

  ショーンなど、前作のゲストキャラはすっぱり切り捨てるくせに、秘密基地みたいな発進台とか、ベッドの強制起こしとかのギミックは、前作の使い回しで、どうも新味にかけるのも、手放しで喜べない理由のひとつです。

 なんて、文句を書き連ねてしまいましたが、全編ノンストップ(ストップモーションなのに?)の粘土アニメの楽しさ、ウサギのかわいさ、セットアップの丹念さ、照明の懲りよう、動きのなめらかさ(本当は気持ちカクカクした動きの方が好き)、アクションの大胆さなど、クレイメーションでここまでやるか? ていうかやりすぎ? っていうほど極めていて、何度観ても楽しめる映画です。実際、1回目より2回目の方が楽しめました。ヒロインの豪邸の庭で、のどかに草をはむウサギたち、かわいすぎます。私もアードマンスタジオの人になって、ウサギ担当になってウサギをうごかしたーい。

  ショーンといえば、アードマンの倉庫の火事で、一緒に燃えちゃったんでしょうか。悲しいです。

☆"MirrorMask"

 夏頃、本屋さんで、"MirrorMask"という、耳慣れぬ映画のぶあつーいメイキング本がでんっと置いてありました。その映画が、やっと公開されました。日本と違って、公開の何ヶ月も前から関連商品を出したりキャンペーンを打ったりなんて、まずしないアメリカでは、異例のことで、どうした風の吹き回しだろう、そんなにすごい映画なのだろうか、と気になっていました。

 ジム・ヘンソン・プロのイギリス映画ですが、着ぐるみは出てきません。今回余裕がなくて、記事とか映評とか全然読んでないのでよくわかりませんが、「サンドマン」というカルトコミックの作者が絡んでいるらしいです。CGが半端じゃない懲りようで、素晴らしかったです。女の子が自分の夢想世界に入りこんでしまう話なので、ファンタスティックな映像がふんだんに出てきます。バサバサ飛んじゃう本とか、クイズに答えられないスフィンクスとか、人のかたちをした風船みたいなもの2体がくっついて浮かんでるのとか、イマジネーションが楽しいです。

 現実世界と夢想世界の関連が、よく分からないのが欠点かな。思春期の女の子の内的世界で、悪=反抗期=ゴスなのはいいけど、お母さんの病気の話が、うまく絡んでこないような。結局一度も親に謝ってないし。魔女に誘惑されて、主人公の子がゴスファッションになるシークエンスは、「レジェンド」を彷彿させました。その時に流れる「クロース・トゥ・ユー」とオルゴール人形たちが、すごく好きです。ヒロインの子、うさぎのスリッパ履いてるんですよね。ウサギのスリッパ、探しているんだけど、映画に出てくるようなかわいいのが、なかなか見つからない。子ども売り場とかにあるのかな。

  母親役は、「ノッティング・ヒルの恋人」やBBCドラマ"The Forsyte Saga"のジーナ・マッキー。私はこの人苦手なんですよね。水をかけてもどしてあげたくなります(^_^;)。あと、司書の声役で、スティーブン・フライが出てます。

☆Serenity

 FOXテレビで短命に終わったSFドラマの映画化だそうです。おもしろかったです! TVシリーズがとても見たくなりました。ええと、「バフィー」に関わっていた人たちが作っているのかな? 西部劇が入ってますが、古くささ、やぼったさはなく、SF映画のニュージェネレーションって感じ。「リディック」も、これくらいスマートに出来てたらよかったんですけど。アニメでいうと、「カウボーイ・ビバップ」をはじめて見た時の印象に似ています。設定も似てるか。ただ、主人公たちがみんな、致命傷を負っても次のシークエンスではケロッと直ってるのが解せませんでした。みんな実は人間じゃないとか? 登場人物の一人に、サンディ・ニュートンに少し似ている、小柄なアジア系の少女が出てきて、立ちまわりも身軽で、印象的だったのですが、あとでプロフィールをみたら、バレリーナ出身だそうで、納得です。

映画がはけたあと、ロビーでカレッジの英語の先生にバッタリ会ったんですが、かなり年配の女性なのに、TVシリーズのファンだそうで、意外でした。英語の先生も大ファンの「Serenity」、要チェックだ。

☆Flight Plan

 ジョディ・フォスター主演! 飛行機の中で娘が消えた! なんか前作も似たような映画をやっていませんでしたか。共演のピーター・サースガードと一緒に、狭苦しい部屋に入る場面があるんですが、サースガードは閉所恐怖症で、冷や汗たらたら流しながら演じてたらしいです。サースガードの役は、ちょっとコリン・ファースにやらせてみたかったな。似たタイプの役者だと思います。

 フライト・アテンダント組合が、「私たちを無能の人非人に描いている!」とおかんむりですが、私は、この映画で描かれている客室乗務員たちを見て、日頃感じている彼ら(アメリカの航空会社のフライト・アテンダントたち)への印象が、自分だけのものじゃなかったんだなぁ、と密かに溜飲を下げたのですが(^_^:)。なんかおっかないんだもん。わたしも怒られるかな。

 とにかくジョディちゃんが前作と同じくでずっぱりの一人舞台で、大満足。

☆「秘密のかけら」Where The Truth Lies さて、本家コリン・ファースの新作です。サンタでは、予定より1週間遅れて「密やかに」公開されました。監督はアトム・エゴヤン。ケビン・ベーコン、アリソン・ローマン共演。マーティン&ルイスのようなデュオ、ラニーとヴィンスの突然の解散にまつわる殺人事件の謎に迫るミステリー。 本作はNC-17です。新聞や雑誌によっては広告を載せてくれません。監督は、何とかR指定にしたかったのですが、映倫はただ"thrust"の数を数えるだけなので、映画の性格上どうしてもそこをごまかせなかったため、あきらめたそうです(FLMという独立映画のフリーペーパーに、監督本人自ら詳しく苦労話を書いていました)。クイズ。はじめてNC-17の指定を受けた映画はなーんだ?

 そんなわけで、相当生々しい濡れ場を覚悟して行ったのですが、全然大丈夫でした! 濡れ場シーンはドライに描くか、ファンタスティックなオブラートに包んであるので、ぜんぜんやらしくないから、大丈夫。もちろんすっぽんぽんのお尻とか、でてくるけど。主にケビン・ベーコン(吹き替えだろうけど)。コリンはお尻を見せる代わりに、ウサ耳をつけてくれます!! (ハッキリいって、一生つけてて欲しい) でもほとんど口ひげを生やした老けメイクなんですよね。それでも時々とってもカッコいいショットがあるし、コンビ時代はいつもりゅうとした黒いスーツを着ていて、シルエットがカッコいいったら。ウサ耳場面では、アリスが出てきて、「ホワイト・ラビット」という題の歌を歌います。オリジナルはジェファーソン・エアプレインなのかな。そんなタイトルだったんだ。

 正直申しまして、ウサ耳コリンで頭がいっぱいで、ほかは忘れてしまいました(^_^;)。でも、意外なほど堪能しました。好きな題材でも、好きな展開でもないのに、楽しめてしまう。そこが映画のおもしろいところですよね。コリンも、見せ場がいっぱいあって、満足、満足。演じていても、演じがいがあったことでしょう。"Four Play"(日本未公開)の上を行く暴力コリン、静かなコリン、発情するコリン、よろめくコリンエンターテイナーするコリン、いろいろみれます!

 ただ、ストレートな、「これ」とジャンルでくくれないタイプの映画なので、アメリカでは受けないかも。今では考えられない70年代のデラックスなファーストクラスの飛行機場面を前面に出して、宣伝も苦労しているみたいでした。アメリカ版のポスターで受ける印象よりも上品な内容なのも、ちぐはぐな印象を与えています。サンタでも、2週間で「密やかに」消えていきました。

クイズの答え:「ヘンリー&ジューン」。これはこってりエロかったです。マリア・デ・メロシュのアナイスがかわいい。

※前回(第17回)の訂正です。"Grizzly Man"のところで、「インディアン」とあるのは「イヌイット」の間違いです。失礼いたしました。このほかにも、ちょくちょく間違えているんですけどね(^_^;)。

10月分、間が開いちゃってすみません! 今回「ウォレスとグルミット」のことを書いたけど、今秋からカレッジで立体アニメの講座を取っています! 自分でアニメを撮ったりして、おもしろいです。人形を動かすのってホントたいへん。つくづく、「コープス・ブライド」や「W&G」の動きの繊細さや多彩さには感心します。短気でがさつな人(=自分)には出来ない技です。

ぢゃ、また来月(あたり)。
  (Nov 8. 2005)
電気羊

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