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■電気羊プロフィール
アニメーター、編集者を経て現在はフリーライター兼翻訳者のハシクレをしている。好きな映画は「ブレードランナー」、好きな役者はコリン・ファースと嵐寛寿郎。だんなについて、目下カリフォルニア州サンタクルーズに滞在中。せっかくなんで、コミュニティ・カレッジに通いつつ、映画三昧している。この度3年越しの夢が叶い、コリン・ファース主演作「フィーバー・ピッチ」で字幕翻訳家デビュー! 趣味はスキューバダイビングとビリヤード(どっちも超ヘタ)。日本から連れてきた耳垂れウサギを飼っている。


■過去記事一覧



写真01
「ライフアクアティック」
チラシ

写真02
「ミリオンダラー・ベイビー」
チラシ

写真03
「ビヨンド the シー」
チラシ

 どうも! この原稿、アカデミー賞発表数時間前に書いてます。何が賞を取るでしょうね〜。わたしの願望は、作品賞が「ミリオンダラー・ベイビー」、監督賞がスコセッシ、女優賞がイメルダ・スタウントンなんですが、そうはいかんでしょうね(^_^;)。"Vera Drake"のスタウントン、五言絶句の素晴らしさでした(なんだそりゃ)。というわけで、今回の「もぎたて通信」、いよいよイーストウッドの問題作「ミリオンダラー・ベイビー」の登場です。

☆「ライフ・アクアティック」The Life Aquatic With Steve Zissou

「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」のウェス・アンダーソン監督作。なぜか夏頃からずーっと予告編を流していて、公開された時には「もういいや」状態だったのですが、カラフルなポスターに誘われ観てきました。

海洋学者のスティーブ・ジスーは、私設海底調査チームを率いて世界の海を探検した成果を、毎年ドキュメンタリーフィルムに収めて発表していた。今回の調査は、スティーブの長年の相棒を殺した憎っくき"ジャガー・シャーク"への敵討ちが目的だ。出発直前、スティーブの息子だと名乗るパイロットのネッドが現れ、チーム・ジスーの一員として調査船ベラフォンテ号に乗り組む。シャークを追ってベラフォンテ号が向かうのは、 海賊の出没する危険な地域だったーー!

カラフルなCGで作った海の生き物(ヘンリー・セリックが作ったんですって!)とか、ベラフォンテ号内部(断面図のようなセットの中を、キャラクターが行き来するので、内部がばっちり丸みえ。資料室やサウナもあるし、最下層には2匹のイルカが飼われてる! 子どもが図画工作の時間にお絵かきしたみたいな作りなのだ)とか、チームジスーが着用する、「Z」の頭文字のついたいろんな制服や小道具など、ディテールに凝ってあって面白いです。「テネンバウム」では監督のこだわりぶりがちょっとうるさかったけど、今回は広い海が舞台だけあって、こだわってこだわりすぎることはありません(^_^)。相変わらず人間関係がややこしいです。みんなマイペースな独走型かと思いきや、妙にひとなつっこくて、つるみたがるところが、案外幅広い層に受けてる理由でしょうか。一見無表情で何考えてるか分からなくても、実はすごく感情的(子供っぽいほど)っていうところがね。予告編で、強面のウィレム・デフォーがジスーの同行メンバーに選ばれなくてすねるところ、何度観ても笑っちゃう。

出演は、ジャック・クストーがモデルのジスー博士(「イルカが知的だっていうけど、その証拠を見たことがないね」っていうヘソ曲がりですが)にビル・マーレイ、妻役にアンジェリカ・ヒューストン、その元夫でジスーのライバル学者役にジェフ・ゴールドブラム、息子(かもしれない)役にオーウェン・ウィルソン、ジスーのパトロン役にマイケル・ガンボン、チームに同行する妊娠中の記者役にケイト・ブランシェット(本当に妊娠中だった)、チームの一員としてノア・テイラーなど、キャストもカラフルなのでした。鮫に食われたという相棒役のシーモア・カッセルは、評論家のロジャー・エバートによると、常々「鮫に食われる役がやりたい」と言っていたそうです(^_^)。

「ライフ・アクアティック」公式サイト

☆「ミリオンダラー・ベイビー」Million Dollar Baby

アカデミー賞有力候補作のひとつ、クリント・イーストウッド監督・主演のウワサの映画がやっと公開になりました。

ボクサー志願のマギー(ヒラリー・スワンク)は、老ボクサー・トレーナーのフランキー(イーストウッド)に自分をトレーニングしてくれるよう頼むが、女は教えないと言ってすげなく断られる。三十路過ぎのマギーは、ボクシングを始めるには遅すぎた。だが、マギーはめげずにフランキーのボクシング・ジムに通いつめて一人練習に励む。元ボクサーで、ジムの雑用係兼パートナーのスクラップ(モーガン・フリーマン)は、こっそりマギーにアドバイスをしてやる。手塩にかけて育てたチャンピオン候補の逸材が他ジムに移ってしまったショックも手伝い、フランクは根負けしてコーチをつけてやる。「自分からボクシングを取ったら何もない、ただのゴミ屑」だと思っているマギーは、細身の体から自分の全存在を賭けたようなパンチを繰り出し、勝負強かった。デビュー戦以来連戦連勝、どれも試合開始早々に相手をノックダウンしてしまう。稼いだ賞金は、すべて貧しいトレーラーハウス住まいの母親と妹一家に送るのだが、母親はなぜか感謝するどころか娘をなじる。とうとう、タイトルマッチへの出場が決まる。相手は、勝つためならどんな反則技も厭わない危険なファイターだーー。

むちゃくちゃ泣きました。後半の展開が予想外で、不意をつかれました。セリフは結構面白くて、みんな受けてんたんですが、わたしはよく聞き取れませんでした。マギーは猫も杓子も自己肯定だけは得意なアメリカ人にはめずらしく、極端なほど自己卑下していて、彼女の部屋のあまりの殺風景さに胸が痛みます。殺風景さでいったら、ジムに住み込んでるスクラップの部屋もいい勝負(2人ともボクシング以外何も持ってないという共通項がある。フランキーはまだ信仰とか娘への思いとかがあるけど)で、2人の荒れ果てた部屋に代表されるストイックさ、無欲さ(ボクシング以外への)が、普段いろいろと余計な物に振り回されてる自分たちが見失ってるものを持ってるように映り、ストーリーに引き込まれます。スクラップの片眼が見えないのは、選手時代の最後の試合でやられたためで、その時彼のトレイナーだったフランキーは責任を感じて、その後は選手たちを守ろうとしすぎて、結局逃げられちゃったりしています。マギーの自己否定の原因は、母親にあるのが後に分かるのですが、母親のキャラクターが強烈過ぎて、ストイックな物語のなかで強烈な異彩を放ちます(「許されざる者」のジーン・ハックマン的な役割)。彼女に限らず、どのキャラクターもステレオタイプに描かれてますが、陳腐とはほど遠いのは、イーストウッドの渋〜い持ち味の演出によるのでしょう。

映画が終わった後、10分くらいは明かりをつけないでいて欲しいタイプの映画です。老トレーナーと女ボクサーの話かと思ったら、やっぱりこれも、最後の最後で「イーストウッドの演じる男の物語」になってましたけどね。「あしたのジョー」でジョーより丹下段平のその後が気になった人は、絶対見よう!?

原作は、 F・X・トゥールの短編集「テン・カウント」。

「ミリオンダラー・ベイビー」公式サイト

☆「 ビヨンド the シー 夢見るように歌えば」Beyond The Sea

ケヴィン・スペイシーが、昔からの大ファンだったという歌手、ボビー・ダーリンの伝記をミュージカル仕立てで映画化。ボビー・ダーリンという歌手は知りませんでしたが、「マック・ザ・ナイフ」や「ビヨンド・ザ・シー」を歌った人なのですね。

オープニングは、ステージに向かうボビー・ダーリンで始まり、観客の前で「マック・ザ・ナイフ」を歌っている最中にボビーが「演奏やめ!」とマイクを降ろすと、実はダーリンがダーリンの人生を描く映画を撮影中だった、という仕掛け。休憩中に、しつこい記者が、「この役を演じるには老けすぎなのでは?」とぶしつけな質問をすると、ダーリンの付き人で義兄のチャーリーが、「本人が本人を演じるのに老けすぎなんてことがあるかい!」と言い返します。これは、ダーリンを演じるにはスペイシーは老けすぎ、という批判が必ず出るのを見越しての牽制球です。以後、幼いダーリンと成人後(というか死後の)のダーリンが相談しながら自分の伝記映画を作っていく、という構成で進んで行きます(実際にダーリンが自伝映画を作った事実はない)。幼いダーリンが、「それは事実と違う」とリアリズム志向なのに対し、大人のダーリンはムーンライトがなんとか、って言って、ちょっとの脚色は許されるんだ、と丸めこみます(いいセリフだったけど忘れちゃった)。

冒頭でいくらエクスキューズされても、やっぱり老け過ぎ感はいなめません。晩年(ダーリンは37才で早世している)ならともかく、10代20代までスペイシーが演じるのは、ちょっとね。評価は極端にバラバラで、「ダーリンの声に全く似てないし、踊りもヘロヘロ、ミュージカル映画として目も当てられない」というものから、「スペイシーは歌も踊りもダーリンより巧い。新しいタイプのミュージカル映画だ」というものまであり、スペイシーが好きか嫌いかで評価も真っ二つって感じです。わたしはスペイシー嫌いじゃないです。観客も、ダーリンを覚えている年代の人が多かったですが、曲に会わせて足踏みしたり、エンディングには拍手したりと、楽しんでいたようです。年齢問題に目をつぶれば、いくつか名セリフもあるし、歌も踊りも別に悪いと思わないし(カリスマは感じさせないけど)、ボビー・ダーリンという歌手に興味がなくても十分楽しめました。

出演は、ボビーのマネージャー役にジョン・グッド、チャーリー役にボブ・ホスキンス、母親役にブレンダ・ブレッシン、映画共演がきっかけで結婚することになるサンドラ・ディー役にケイト・ボスワース(新婚初夜のエピソードが面白い)、ステージ・ママ役にグレタ・スカッキ。

「ビヨンド the シー 夢見るように歌えば」公式サイト

☆In Good Company

「アバウト・ア・ボーイ」のポール・ワイツ脚本・監督による社会派ラブコメディ。

「スポーツ・アンド・アメリカン」誌の広告部部長ダン・フォアマン(デニス・クエイド)は、出版社が大手コングロマリットに買収されたことで部長の地位を追われる。新しい部長として親会社からやってきたのは、26才の若者カーター・デュリエ(トファー・グレイス)だった。息子のような年頃のカーターの部下として働くのは面白くないが、妻が3人目の子供を身ごもった矢先で、おまけに長女アレックス(スカーレット・ヨハンソン)の大学進学費を出すために2つ目のローンを組んだフォアマンにとって、他の同僚のように解雇されないだけ幸運だった。カーターは優れた企画センスに恵まれ「バカ」がつくほど仕事熱心だが、家庭を顧みなかったために新妻(セルマ・ブレア)に家を出て行かれてしまう。ガランとした新居に一人で過ごすのがいたたまれなくなったカーターは、日曜だというのに緊急会議を開いてフォアマンたちを会社に呼び出す始末だった。会議の後も、強引にフォアマン家のディナーに付いてきたカーターは、アレックスに心惹かれる。やがて大学寮に移ったアレックスと、秘かにデートを重ねるカーター。だが、2人がレストランで一緒にいる現場を見たフォアマンは逆上し、カーターに殴りかかる。めげずにカーターはアレックスに愛を告白するが……。

恋愛コメディかと思ったら、 クエイドとグレイスの年の逆転した上下関係を通して、コングロマリット化やグローバリゼーションの進んだ企業の倫理を問う、ちょっと社会派な部分の比重の方が大きい映画でした。「クビにする時、どうして『解雇する』じゃなくて『We (must) let you go(辞めてもらう)』っていうんだ、誰も辞めたかないのに」と抗議しながら、自分が長年一緒に働いてきた部下にクビを申し渡すとき、"let you go"というクエイドとか、「シナジー効果だ」とかおためごかしをいいながらどんどん古株社員をクビにするCEO(マルコム・マクダウェエル)に、「いくらデカくたって、企業がデモクラシーを無視していいのか」と疑問を投げかけるクエイドとか、 視点は直球だけど 脚本がユーモラスなのと、デヴィッド・バーンなどのポップ・ミュージックの使い方も手伝って、重さはまったくありません。

トファー・グレイスは、ペーソス溢れる若者を 演じられるので、今後も重宝されそうです。スカーレットちゃんはすでに大物女優の安定感アリアリです。 日本未公開ですが、アメリカでは評価の高いインディペンデント映画に" In the Company of Men"という作品があります。「ベティ・サイズモア」「ポゼッション」のニール・ラビュートデビュー作で、友人同士の同僚2人を主人公に、男同士の友情の裏側みたいなものを描いた、かなり辛辣な風刺コメディなのですが、本作はそれのアンチテーゼみたいな内容で、「ビジネスマンだって人間的になっていいんだ」ってホッとさせる映画でした(^_^)。実際は、もちろん両作の真ん中あたりが真実なんでしょうけど。

"In Good Company" 公式サイト(英語)

☆「ロング・エンゲージメント」A Very Long engagement

「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督&オドレイ・トトゥ主演コンビによる、戦争が引き裂いた恋人たちの運命を描くラブ・ストーリー。

第一次大戦、ドイツ軍と膠着状態にあるフランス軍の前線部隊で、5人の兵士たちが軍紀違反の罪で処刑されようとしていた。その中でとりわけ若く、「とうもろこし頭」とあだ名されたマネクは、戦場の悲惨さに耐えきれず、婚約者の元へ帰ろうと、わざと敵兵に手を撃ち抜かせた罪で有罪を宣告された。囚人たちは、両軍の真ん中、“ノーマンズ・ランド(緩衝地帯)” に放置される。後はドイツ兵が片をつけてくれるはずだ。だが、間もなく激しい戦闘が始まり、ノーマンズ・ランドも両軍入り乱れる戦場と化した。そして、マレクの帰りを待っているマチルドの元へ、戦死の通知が届く。マチルドはマレクの死に確信がいかず、自力で彼の消息をつかもうとパリへ向かうのだった。

部隊の生き残りの証言や、遺留品などを手がかりに、マレクとともに処刑されたという兵士たちの生死を一人一人たどっていくマチルド。マレクの行方か、彼が死んだという決定的な証拠が見つかるまで、ポリオの後遺症で不自由な右足を引きずりながら、彼女の旅は続きます。旅といっても行ったきり帰ってこないのではなく、新たな手がかりが見つかるたび、家を離れて列車で目的地まで出かけます。ときどき挫けそうになりますが、その度に「リンゴの皮を最後まで途切れずに剥けたらまだ生きてる」とか、願かけをして希望をつなぐマチルドが、アメリっぽくてオドレイ・トトゥにピッタリです。ひとりでがむしゃらにがんばるのではなくて、周囲の力を借りながらひとつひとつの手がかりを追うので、悲壮すぎるヒロイズムもありません。「あの時、実際には何が起きたのか? 誰がどんな行動に出たのか?」というのが少しずつ明らかになる、謎解きの面白さもあります。ただ、ナレーションを使う「アメリ」路線は、この題材には不向きだったような気がします。淡々としすぎて、この手の映画に期待する、感動とかカタルシスとかが味わえずに物足りなさ感がのこりました。周囲も巻き込んじゃうヒロイン像は、トトゥにぴったりでしたけどね。

ジョディ・フォスターが小さな役で出てきます。年は取ってきてるけど、やっぱりいいなあ。もっと彼女を観たかったです。要所要所で挿入される戦場のシーンが迫力で、兵士達が感じたであろう生理的な不快さや恐怖がヒシヒシ伝わってきます。自分を傷つけても帰りたくもなろうというものです。マチルドとマレクに限らず、戦争のおかげでブツ切れにされてしまったそれぞれの人生の喪失感は、政府は補償してくれません。自分たちで埋めていくしかなく、その方法は人それぞれ。マチルダとは別に、復讐という方法を選ぶキャラクターも出て来、この映画に厚みを与えています。

「ロング・エンゲージメント」公式サイト

 ところで、2月はじめ、ちょっと日本に行ってきました。「ブリジット・ジョーンズの日記2」で来日したコリン・ファースを見に、いえ取材したのです。「キネマ旬報」3月下旬号に記事が載るので、よろしくね! 

コリンファン、決して少なくはないと思うのですが、もう一人のコリン、ファレルのようなお騒がせキャラクターじゃないのと、ファンがヨン様ファンみたいに表に出さずに内々で愛でる人畜無害タイプなので、マスコミに認識されにくく、記者会見は開かれずじまいだったんですよね、残念! でも本人に「ぼくのプレミア・ライフ」のDVDを手渡し出来て、羊は大満足! 「BJD2」で知名度アップして欲しいです。

ぢゃ、また来月。
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