カリフォルニアはサンタクルーズから、毎月最新ホヤホヤの映画情報をお届けする「もぎたて映画通信」。第8回は、めでたく揃ってトップ10入りした邦画リメイク作2本と、大統領選目前に公開された政治ネタもの(!?)2本をご紹介!
☆"Shall We Dance?"
周防正行監督作「Shall We ダンス?」のリメイクです。役所広司→リチャード・ギア、草刈民代→ジェニファー・ロペス、原日出子→サンドラ・ブロック、竹中直人→スタンリー・トゥッチという配役で、舞台は電車の似合う都市、シカゴの設定。
あんまりレビューが芳しくなかったので、おっかなびっくり初日に劇場に出かけたのですが、お客さんは、とってもとっても楽しんでました! わたし以外はほとんど皆さん白髪の、シニアの方々で、マチネーということもありますが、普通のハリウッドの映画に比べてテンポも内容も穏やかなので、熟年層のほうが楽しめるし、映画としてもそういう人に観てもらうほうが幸福だろうと思います。
最初、窓辺にたたずむジェイローに、草刈民代と違って凛とした清らかさを感じられなくて、ああやっぱりミスキャスト、と思ったのですが、でも「ザ・セル」の時は、彼女について何の予備知識もなく、女神様みたいだ、と思って観てたので、彼女のせいではなく受け手の問題なんですが。そんな雑念を引きずっていてはもったいない映画なので、ともすれば、リチャード・ギアには哀愁が足らん! とかスーザン・サランドンはあでやか過ぎる! とか、何で弁護士なのに電車通勤なんだ! とか、そもそも日本のサラリーマンと社交ダンスという組み合わせの妙が面白いのに、もともとオープンで八頭身のアメリカ人に置き換えてどうするねん! 等々、つっこみたくなるのをグッとこらえて鑑賞しました。キャラクターそのものも演じ手に合わせて変えてあって、例えば主人公にダンスのイロハを教える場面では、オリジナルでは最初の一歩の大事さを教えてましたが、ジェイローはダンスに込めるセクシーな情熱を形而上的に説き、「ルンバは水平方向の望みを垂直方向に表現する踊りなのよ」と実演してみせて、女性パートナーを生徒たちを悩殺します。
スタンリー・トゥッチの竹中直人ぶりも堂に入ったもので、すごく愉快! (竹中直人ってラテン系の人だったら全然その辺にいる普通の人かも(^_^))職場でのシーン、ちょっと変えてあって、スカッとする場面がある(そういう風にアレンジするところ、ハリウッドってうまいと感心もするし、そうしないとお客さんがついてこないと計算するところが悲しくもあり)のですが、そこでは拍手も起きてました。探偵役のリチャード・ジェンキンズも、顔と雰囲気が柄本明入っててうれしいです。彼は、HBOのドラマ「Six
Feet Under」で主人公一家の亡くなった父親(しょっちゅう幽霊として出てくる)役を演じてます。主人公と一緒に学ぶ生徒役の1人、「引っ越しのサカイ」の人が演じてた役柄は180度変えて、労働者風ラテン系にいちゃん(そしてちょっとした秘密あり)になってましたが、演じてたボビー・カナベールという人は、最近「ウィル&グレース」でウィルのBF役で出てます。
邦画とハリウッド映画の映画製作作法の違いを比べつつ、映画としても楽しめて、よかったです。興行成績や批評家受けはあまりよくないとしても、見に来た人は、満足していい気持ちで帰れると思うので、それでいいじゃないか、と思います。しつこくクレジットを観ていたら、音楽がガブリエル・ヤーレで、ちょっと感動。
見終わった後、もう一度オリジナルが見たくなって、図書館で借りたのですが(ちゃんとある)、昔観たよりずっと楽しめました。やっぱり若者にはわからない映画かも。と思ったら、オリジナルより20分削ってあります。監督的には不満だったかもしれませんが、削ったことで見やすくなったと思います。リメイクとくらべ、じっくりじっくり、ヘタクソな主人公がだんだんうまくなって、教室のみんなや先生と仲良くなっていく過程が描かれていて(リメイク版なんてギアが「僕は覚えは早いから」っていいますから)、それは必要な長さだとは思うのですが、受け手の許容量って限界があるからさ。トイレの場面、リメイクでも再現されてたけど、これは竹中直人の方がぶっちぎりで面白かったです(^_^)。ただ、最後は、リメイク版の方がいいと思います。オリジナル版だと、やっぱり妻子は邪魔者扱いでしたから。
TVでジェイローのインタビューをやってましたが、「オリジナル版好き」っていってました。あまり乗り気じゃなかったようですが、ミラマックスと、何かとバーターで引き受けたそうです。
公開第1週目の成績は、第4位でしたが、2週目は3位に浮上。やっぱり観客に支持されたってことかな。
★"Shall
We Dance?"公式ページ(英語版)
☆"Team America: World
Police"
さあてお待ちかね、トレイ&マットの「サウスパーク」コンビによるスーパーマリオネーション「Team
America」が公開になりました! 国際救助隊ならぬ国際警察の5人の隊員が、テロリスト達を追って、パリ、カイロ、パナマ運河等々を壊しまくる痛快ハリウッドアクション満載娯楽大作人形アニメ!!
もう期待に違わず、ムチャおかしいです! いちいちジェリー・ブラッカイマー製大味ハリウッドアクション駄作のパロディになっていて、人形同志が「戦いを盛り上げようぜ」と武器を捨ててカンフー対決するのですが、あやつり人形同志なのでただ2体がパタパタ相手と絡み合ってるだけの超おマヌケな姿で、トレイ&マットに言わせると、相手を見据えてないところなんかが特にジェリー・ブラッカイマー印映画なんだそうです。NC−17からR指定になった問題の過激なセックスシーン(“パペット・ラブ”だと訂正するトレイ&マット)でも、ヒロインがヒーローのおしゃべりを止めさせようとして出した指が、狙いがそれて目に突っこんじゃったりするのが、人形アニメ好きの胸を厚く焦がします(^_^)。主人公がバイクで疾走するシーンでは、「『パールハーバー』最低〜。ベン・アフレックは演技学校で勉強しなおせ〜」という歌が、モンタージュシーンでは「これがモンタージュー〜」とモンタージュの作り方を解説する、エイゼンシュタインもビックリの映画科学生必聴(?)のBGMがかかります。セリフも、「コントロールできないから感情というんだ」とか、「あなたとの友情を慈しむわ」とか、目クソ鼻クソ的論法の演説とか、いわずもがなクサいセリフのオンパレード。
映画版「サウスパーク」はミュージカルとして意外な評価を受けましたが、今回も悪の黒幕(というかゴキブリ)、金日正がハワード・ブリクス国連査察委員長を鮫のエサにしちゃった後(わたしの後ろのオッサンが異常に受けてましたが、恨みでもあるのか!?)、「ぼくちゃんて孤独〜」と熱唱します。
アレック・ボールドウィンやティム・ロビンス、ショーン・ペンなど、「戦争反対」とか、政治に口を出すセレブ(マイケル・ムーアも入るらしい)がよっぽどカンに障るらしく、金日正に躍らされる売国奴として描かれ、ヒーロー達に皆殺しされちゃいます。(2匹の虎の餌食になる場面が最高かわいい!)。そういうノンポリ的な、モラトリアムな学生かお前ら、みたいな姿勢を問題視する人もいますが(ロジャー・エバートは「何かに真剣に取り組むことを全てバカにする態度は問題」といい、Variety誌の論説でも「悪ガキには大人が灸を据えてやるべきだ」と不快感丸出し。)、目くじら立てるのがバカらしくなっちゃうくらい、笑っちゃう映画なのだ。でも、現政権に抗議するアレック・ボールドウィンは憎いけど、知事になっちゃったオーストリアなまりの肉体派スターはいいのか?>トレイ&マット。パリとかのロケ地に、いちいち「アメリカから○○マイル」ってテロップ入れる細かい皮肉も入れてるけど、ethnocentricなアメリカ人にピンとくるのか疑問。「スターウォーズ」の楽しいパロディも数カ所あり。
NBCの深夜のトーク番組「コナン・オブライエンショー」に2人がゲスト出演した時のこと、さすがオタクのオピニオン・リーダー(?)コナン、金日正が韓国の映画監督をさらって映画を作らせたことを知ってました。2人は、それも映画に入れたかったけど、誰も本当だって信じてくれないと思ってやめたんだそうです(^_^)。金日正に、映画を送るって言ってました。拉致されるなよ〜。
3分ぐらい続くゲロはきシーンとか、とにかくビロウもいいとこな人形アニメで、帰ってからちょっと川本喜八郎アニメで口直しをしたくなります(^_^;)
(川本喜八郎はこの映画みちゃダメですよ。憤死します)
オープニング成績は第3位。やはりR指定が響いたか、今のアメリカにこの映画を楽しむ余裕がないのか。
★"Team
America: World Police"公式ページ(英語版)
☆「THE JUON/呪怨 」The
Grudge
清水崇監督自ら自作をリメイク。プロデューサーのサム・ライミは、舞台をアメリカに移しちゃうと、日本家屋の持つ閉塞感が失われちゃうからと、日本で撮影したそうです。さすが判っている。
これは文字通り、お化け屋敷ですね〜。ショッキングな場面ごと、笑いが起きてました(こっちの観客はビックリすると笑う)。理由とか起承転結とか因果関係とかなんにもなくて、ただ怖かったですが、別に怖いのに理屈や合理性はなくてもいいのか、とヘンに腑に落ちました。それでも、呪いの正体のあまりの幼稚さだけは、どうしようもなく恥ずかしかったです、日本人女性として。一児の母があんなに幼稚な日記を書きますかぁ!? あれぐらいであんなすごい幽霊になってたら、日本中呪われた家だらけじゃないですか〜。最後、クレジットが始まると、「What!?」っていいながら出てってましたよ、観客。オリジナルは観てないけど、やはりあんななんでしょうか? 繰り返すけど、怖かったですよ。あれはあれでいいと思うんですが、あの日記がねぇ。ブリジット・ジョーンズの日記ですら、怒り出す女性がいるのに、あれじゃねぇ…。
長い黒髪の間からのぞく見開いた目のビジュアルが怖いですが、アメリカ人も怖いと思うでしょうか。興行成績が楽しみです。日本の監督の堂々のアメリカ進出作なので、
オープニング成績第1位を取ったのは喜ばしいですが、しかしあの日記はマズいぞ。日本の女性はあんなに幼稚だと思われたらどうするのだ。長い黒髪といえば、ピクサーの新作、「Mr.
Incredible」の主人公一家の娘が、黒い長髪なのです。ゴスという設定かもしれないけど、髪の毛のライブアクションのモデルはアジア系の女の子がやってました。長髪をCGアニメにするの、すごく手間がかかったそうです。
やっぱり「コナン」にサラ・ミシェル・ゲラーが出たときのこと、日本での和式トイレの恐怖を語ってました(慣れてないから)。国技館に相撲見物に行ったとき、間違って非常ボタンを押しちゃったそうです。よほどトイレに苦労したらしく、覚えた日本語は「すみません、トイレはどこですか」。英語のしゃべれない清水監督に教えた英語は「I
hate Sarah!」と、おちゃめなバフィーでした。シャワーシーンがあるけど、彼女は水にアレルギーなので大変だった、と言ってました。(? 日本の水にってこと?)
石橋凌が、流ちょうな英語を操っててビックリ。ゲラーのBF役は、「ロズウェル」のジェイソン・ベアーでした。
予告編では、似たよーなホラーものばっかり流してました。
★"The
Grudge"公式ページ(英語版)
☆Going Upriver: The
Long War of John Kerry
ジョン・ケリー大統領候補のヴェトナム時代の兵役活動、政治活動を追ったドキュメンタリー。監督は、「アーノルド・シュワルツェネッガーの鋼鉄の男」を撮ったジョージ・バトラー(!)。
学校で無料上映会をやってたので観ました。Moveon.orgが各地の学校で上映会をやってるみたいです。確かブラピもこの映画の試写会に駆けつけて、ケリーを応援してましたよね。
これは「華氏911」とセットで、アメリカ国民は観るべきでしょう。今のケリーじゃなく、当時のケリーだったらみんな迷わず彼に投票するんじゃないでしょうか。ヴェトナムで砲艦による作戦に従事し、戦友を助けるなどの功績で勲章をいくつももらい("THE
MANCHURIAN CANDIDATE"と違ってこれは事実。ブッシュ陣営が汚い中傷広告を出しましたが…)、帰還してからは戦争に反対する帰還兵たちを組織して、公聴会で5分間の素晴らしい証言をする若きケリー。この頃から、ケリーは決して拳を振り上げて声高にまくし立てるタイプではないのが判ります。語り口は静かですが、人に耳を傾けさせる真摯な説得力が彼の身上なれど、大統領戦ではそのスタイルは通用しないので、はったりを効かせたパフォーマンスに無理に改造したのでしょう。無視できない存在になりつつあるケリーにニクソンは警戒心を強めていたのが当時の録音テープで明かされ、側近の1人はケリーがケネディに顔も話し方も酷似してると恐れ、もう1人も「第二のラルフ・ネーダーになる前にあの若造を潰さねば」といいます(このセリフ観客に受けてました)。戦争反対派の帰還兵たちは、受け取った勲章を胸からもぎ取り、次々にホワイトハウス(かな?)に投げ捨てます。
上映後、地元の映画評論家モートン・マーカスによるディスカッションがあったのですが、15分程度の予定が白熱して、1時間半経ってもまだやってました。マーカス先生、最近の韓国映画、日本映画は暴力的なものが増えてきたって言ってますが、どう思います?
音楽はフィリップ・グラス。
10月20日、「ぼくのプレミア・ライフ」DVDが発売されました! 稲本選手のステッカーが効いたのか、がんばって宣伝したのが実を結んだのか、なかなか好調な売れ行きらしいです! 映画を観て下さった方は、感想を教えてくださいね。
★コロムビアMEの「ぼくのプレミア・ライフ」専用ページ
※前回、値段を\3,390と書きましたが、\3,990の誤りです。どうも申し訳ありませんでした。
ぢゃ、また来月。
(Oct 29 2004)
感想メール ヨロシク!
|